ピエール中野さんが監修したオーディオ機器、いわゆる「ピヤホン」シリーズをご存じの方は多いと思います。凛として時雨のドラマーが自ら音を詰めるという企画は、イヤホンの世界ではすっかり定着しました。そのヘッドホン版が「ピッドホン」です。
このAVIOT WA-V1-PNKは、そのピッドホンの3代目にあたります。ベースになっているのはAVIOTのワイヤレスヘッドホンWA-V1で、そこにピエール中野さんが全面的に手を入れた形。2024年8月発売、価格は税込19,800円です。
スペックを眺めていて意外だったのは、最大120時間という再生時間でした。2万円を切るヘッドホンでLDACに対応しながら、バッテリーがこの数字というのは、正直かなり尖った構成です。
この記事では、WA-V1-PNKのスペックと音の傾向を整理したうえで、アプリの不安定さのような実際に指摘されている弱点まで含めて評価します。ぜひ最後までご覧ください。

製品スペック
まず全体像です。40mmドライバーとLDAC、4マイクのアダプティブハイブリッドANC、そして120時間バッテリー。価格から想像するより、載っているものは多い部類に入ります。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 製品名 | AVIOT WA-V1-PNK(ピッドホン3) |
| 発売時期 | 2024年8月(先行予約は同年6月19日開始) |
| 価格 | 税込 19,800円(公式ストア会員価格 17,820円) |
| ドライバー | 40mm ダイナミック型(ネオジム磁石+軽量PETダイアフラム) |
| ノイズキャンセリング | アダプティブハイブリッドANC(4マイク構成) |
| Bluetooth | 5.0 |
| 対応コーデック | SBC / AAC / LDAC |
| 連続再生時間 | 最大120時間 |
| 連続通話時間 | 最大70時間 |
| 急速充電 | 約10分の充電で最大11時間再生 |
| 充電時間 | 約3時間 |
| 質量 | 約267g |
| 有線接続 | 対応(3.5mmステレオミニプラグケーブル同梱) |
| マルチポイント | 2台同時接続(ペアリング登録は最大8台) |
| ハウジング構造 | 2重構造(アウターシェル+インナーバックチャンバー) |
| 充電端子 | USB Type-C |
| カラー | ブラック×ゴールド |
数字で突出しているのは、やはり再生時間です。ワイヤレスヘッドホンの標準的な水準が30〜40時間、長いものでも60時間前後であることを考えると、120時間は文字どおり桁が違います。
「ピッドホン3」という名前が意味するもの

ピエール中野さんの監修モデルは、イヤホンが「ピヤホン」、ヘッドホンが「ピッドホン」と呼び分けられています。WA-V1-PNKはそのピッドホンの3作目。型番末尾の「PNK」がピエール中野監修モデルの目印です。
監修といっても、ロゴを貼っただけの製品とは中身が違います。AVIOTの説明によれば、ドラマーとしての経験を踏まえてドラムの鳴り方を徹底的に詰めたとされていて、特にスネアとバスドラムの質感が調整の軸になっています。楽器そのものが持つ魅力をどう出すか、という方向性です。
遊びの部分もあります。音声ガイダンスを担当しているのは声優の日高のり子さんで、アプリから「ナチュラル」「メカニカル」「ボーイッシュ」「ナウティ」の4種類を切り替えられます。電源を入れるたびに聞こえる音声なので、地味に印象を左右する部分です。
ドラムを軸にしたチューニングは、得意な曲がはっきりしている

音の傾向は、低音域の力強さと中低域のバランスに寄せた作りです。ロックやポップスのように、リズム隊が曲を支えるジャンルではこの調整が素直に効きます。スネアやバスドラムの粒立ちが分かりやすく、演奏の躍動感が前に出てきます。
LDACに対応しているので、Android端末とハイレゾ音源を組み合わせれば解像度も稼げます。ボーカルはやや前に出る傾向で、女性ボーカル曲では鮮明さが際立つという評価が多く見られます。
一方で、高音域の伸びや空間の広がりについては物足りないという指摘もあります。クラシックやジャズのように、高域の余韻と楽器の分離で聴かせるジャンルでは、得意分野から外れると考えたほうがよさそうです。デフォルトの状態はやや低音寄りなので、アプリのイコライザーで調整する前提の機種と捉えておくと期待値がずれません。
ハイレゾやLDACという言葉の意味を整理しておきたい方は、こちらもあわせてどうぞ。
最大120時間というバッテリーが変えること
この機種でいちばん実用に効くのは、間違いなくバッテリーです。最大120時間。ノイズキャンセリングを使っても50時間以上は持つという報告があり、いずれにしても「週に1回充電すれば足りる」領域に入ります。
ヘッドホンを日常的に使っていると、いちばん面倒なのは音質でも装着感でもなく、充電を忘れて外出することです。120時間あると、そもそも残量を気にする習慣自体がなくなります。急速充電も約10分で最大11時間ぶんと余裕があるので、うっかり切らしても実質的には困りません。
有線接続にも対応していて、3.5mmのステレオミニケーブルが同梱されています。電源を入れておけば有線でもノイズキャンセリングが機能します。飛行機の座席モニターにつなぐような場面でも使えるということです。
接続方法によって使える機能が変わる
LDAC対応をうたう機種でよくある誤解ですが、恩恵を受けられるかどうかは接続する端末で決まります。WA-V1-PNKの場合、組み合わせによって使えるものが次のように変わります。
| 接続方法 | 対応コーデック | ノイズキャンセリング | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Bluetooth(Android等) | SBC / AAC / LDAC | 使用可 | ハイレゾ相当の再生 |
| Bluetooth(iPhone等) | SBC / AAC | 使用可 | 通常のワイヤレス再生 |
| 有線(同梱3.5mmケーブル) | — | 電源オンで使用可 | バッテリー切れ時・機内など |
iPhoneはLDACに対応していないため、この機種のハイレゾ関連の売り文句はそのまま当てはまりません。AAC接続でも十分に鳴りますが、LDAC目当てで選ぶならAndroid端末が前提になります。
ノイズキャンセリングと装着感

ノイズキャンセリングは、左右にフィードフォワードとフィードバックのマイクを2基ずつ、合計4マイクを載せたアダプティブハイブリッド方式です。周囲の状況に応じて抑制の強さを自動で変えます。
効きどころははっきりしています。エアコンの唸りや電車の走行音といった低い帯域には有効です。逆に扇風機の風切り音や高い帯域のノイズは残りやすく、BoseやSonyの上位機と比べると遮音の深さでは差があります。ハウジングの物理的な密閉に頼っている部分が大きい、という評価が妥当なところです。
装着感は良好です。イヤーパッドには通気性の高い低反発ウレタンを採用していて、側圧も強すぎません。約267gという重量は、ワイヤレスヘッドホンとしては標準的か、やや軽めの部類に入ります。長時間つけていても頭頂部が痛くなりにくい設計です。
折りたたみができるので、持ち運びも現実的です。専用ポーチと折りたたみ式のデスクフックが同梱されているのも、日常的に持ち出す人には効いてきます。
気になるポイント
価格を考えれば納得できる部分もありますが、購入前に知っておいたほうがよい弱点が4つあります。
- アプリの接続が不安定という報告: 特にAndroidと初期ロットの組み合わせで、専用アプリにつながらないという声が複数あります。イコライザー調整やファームウェア更新がアプリ前提なので、ここが動かないと機能の一部が使えません
- Bluetooth 5.0という世代: 2024年発売の製品としては、Bluetoothのバージョンが一世代前です。実用上の致命傷ではありませんが、同価格帯には5.3世代の機種も増えています
- 高音域の伸びは価格なり: 低音寄りのチューニングで、クラシックやジャズのような高域主体のジャンルには向きません。イコライザーでの調整がほぼ前提になります
- ゲーミングモードでの接続の途切れ: 低遅延モード使用時に接続が切れるという報告があり、特定のゲーム機との相性に注意が要ります
このうちアプリの問題は、ファームウェアの更新状況によって体験が変わる部分です。購入直後にアプリと接続できるかを確認しておくと安心です。
2万円前後のワイヤレスヘッドホンの中での立ち位置
この価格帯は競争が激しく、選択肢が多いところです。WA-V1-PNKの強みは、LDAC対応と120時間バッテリー、そしてピエール中野監修という他にない要素の3点に集約されます。
逆にノイズキャンセリングの深さを最優先するなら、価格帯を上げてBoseのQuietComfort Ultra Headphonesを見たほうが確実です。ANCの静けさそのものを買う製品としては、いまだに基準になる存在です。
同じ2万円前後で、ノイズキャンセリングとのバランスを取りたい場合はAnkerのSoundcore Space One Proが比較対象になります。こちらは折りたたみ機構と価格のバランスで選ばれることが多い機種です。
その中でWA-V1-PNKを選ぶ理由があるとすれば、ドラムを軸にしたチューニングと、充電をほぼ意識しなくてよいバッテリーの2つです。ここに価値を感じるかどうかが分かれ目になります。
おすすめな人・使用シーン

◆ 充電の手間から解放されたい人
最大120時間は、日常の使い方を変えるだけの数字です。毎日数時間使っても週1回の充電で足りるので、「使いたいときに電池が切れている」という一番よくある失敗がほぼ起きません。
◆ ロック・ポップスを主に聴く人
リズム隊が主役になるジャンルとの相性が良い機種です。ドラムの質感を軸に詰めたチューニングなので、バンドサウンドを気持ちよく鳴らしたい方には素直に刺さります。
◆ AndroidでLDACを使える環境の人
2万円を切る価格でLDACに対応しているのは強みです。ハイレゾ音源をワイヤレスで聴きたい方にとって、この価格帯での選択肢はそれほど多くありません。
◆ ピエール中野さんの監修モデルに関心がある人
ピヤホン・ピッドホンのシリーズを追いかけている方であれば、ヘッドホン版の3代目としての位置づけそのものが選ぶ理由になります。音声ガイダンスの遊び心も含めて、この製品ならではの部分です。
◆ 逆に、避けたほうがいい人
ノイズキャンセリングの静けさを最優先する方、クラシックやジャズを中心に聴く方、アプリでの細かい設定を確実に使いたい方には向きません。いずれもこの機種が苦手としている領域です。
よくある質問(FAQ)
- Q「ピッドホン」と「ピヤホン」は何が違うのですか?
- A
どちらもピエール中野さん監修モデルの呼び名で、ヘッドホンが「ピッドホン」、イヤホンが「ピヤホン」です。WA-V1-PNKはピッドホンの3代目にあたります。
- QiPhoneでもLDACのハイレゾ再生はできますか?
- A
できません。iPhoneはLDACに対応していないため、接続はAACになります。LDACを使いたい場合はLDAC対応のAndroid端末が必要です。
- Q本当に120時間も再生できますか?
- A
公称値は最大120時間で、ノイズキャンセリングを使用した場合でも50時間以上使えたという報告があります。使用音量やコーデックによって変動しますが、週1回の充電で足りる水準です。
- Qノイズキャンセリングの効きはどのくらいですか?
- A
エアコンや電車の走行音のような低い帯域には有効です。一方で風切り音や高い帯域のノイズは残りやすく、BoseやSonyの上位機と同等の静けさを期待する製品ではありません。
- Qバッテリーが切れても使えますか?
- A
同梱の3.5mmステレオミニプラグケーブルで有線接続すれば再生できます。電源を入れた状態であれば、有線接続時もノイズキャンセリングが機能します。
まとめ
AVIOT WA-V1-PNKは、ピエール中野監修という企画性だけの製品ではありませんでした。40mmドライバーとLDAC、そして最大120時間というバッテリーを2万円以下にまとめた構成そのものに、はっきりとした強みがあります。
一方で、ノイズキャンセリングの深さやアプリの安定性といった、価格なりに割り切られている部分も確かにあります。すべてを高い水準で揃えた製品ではなく、得意な領域が明確に決まっているヘッドホンです。
- 強み: 最大120時間バッテリー、2万円以下でLDAC対応、ドラムを軸にしたチューニング
- 弱み: ノイズキャンセリングは上位機に及ばず、アプリの接続不安定という報告あり
- 相性が良い音楽: ロック・ポップスなどリズム隊が主役のジャンル
- 注意点: LDACの恩恵を受けられるのはAndroid環境。iPhoneではAAC接続になる
充電の煩わしさから解放されたい方、そしてバンドサウンドを気持ちよく鳴らしたい方には、価格以上の満足感がある一台です。逆に静寂そのものを求めるなら、素直にノイズキャンセリング特化の機種を選んだほうが幸せになれます。
項目別評価
いいところと割り切るところを、フラットに5項目で評価しました。
- 音質:★★★★☆ 4.0(40mm+LDAC、ドラムを軸にした調整)
- ノイズキャンセリング:★★★☆☆ 3.0(低域には有効、高域は残る)
- バッテリー:★★★★★ 5.0(最大120時間・10分充電で11時間)
- 装着感:★★★★☆ 4.0(低反発ウレタン・約267g・折りたたみ可)
- コスパ:★★★★☆ 4.0(2万円以下でLDAC+120時間)
- 総合:★★★★☆ 4.0
私自身、Victor WOOD masterやDENON Perl Proのような音の作り込みが濃い機種を日常的に使っていますが、そういう耳で聴いても、この価格でここまで方向性がはっきりしている製品は貴重だと感じます。狙いが明快なヘッドホンを探している方は、ぜひ一度手に取ってみてください。







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