トラックボールは長らく「ロジクールかエレコムか」の二択で語られてきました。親指で操作するタイプなら、上はロジクールのMX ERGO S、下は同じくERGO M575SP。この2機種の間に選択肢が薄いというのが、ここ数年の実情だったと思います。
そこへ2026年9月2日、バッファローが初めてのトラックボール「BSTBB700Xシリーズ」を投入しました。価格は税込6,990円。2.4GHz無線とBluetooth 2台の合計3台を天面のボタンで切り替えられ、金属製の高速スクロールホイールを載せ、単3形乾電池1本で最大約2年半動く仕様です。発売記念として9月13日まで先着1,200台に1,000円引きクーポンが配られており、実質5,990円で手に入ります。
エントリー価格で「3台切替」と「高速スクロール」を両方入れてきたのは、この価格帯では珍しい組み合わせです。この記事では、公式仕様とPC Watchの実機レビュー、開発者インタビューをもとに、BSTBB700Xの中身と、MX ERGO S・M575SPと比べてどこが違うのかを整理します。価格はすべて税込、2026年9月6日時点で確認したものです。
製品スペック一覧
数値はバッファロー公式の製品ページとニュースリリースをもとにしています。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 製品名 | バッファロー BSTBB700Xシリーズ(BSTBB700BKX グラファイトブラック/BSTBB700WHX シルキーホワイト) |
| 発売日 | 2026年9月2日 |
| 価格 | 税込6,990円(発売記念クーポンで5,990円・9月13日まで先着1,200台) |
| 操作タイプ | 親指操作型・ボール径34mm・人工ルビー支持球 |
| センサー | IR LED光学式・500/800/1,200DPI(天面ボタンで3段階切替) |
| ボタン | 5ボタン(左右・ホイールクリック・進む・戻る)+DPI切替+接続先切替。チルトホイール |
| 静音 | ホイールチルトを除く全ボタンに静音スイッチ |
| 接続 | 2.4GHz無線(USB Type-Aレシーバー・本体底面に収納可)+Bluetooth 5.0。最大3台登録・天面ボタンで切替 |
| 電源 | 単3形乾電池1本(アルカリ/マンガン/ニッケル水素)。想定使用可能時間 最大約2年6か月 |
| 寸法・重量 | 約95×51×117mm・約150g(電池含む) |
| 対応OS | Windows 11/10、macOS 10.9以降、ChromeOS、iPadOS/iOS 13以降、Android 4.4以降 |
| ソフト | マウスカスタム+(Windows専用・管理者権限不要) |
| 同梱物 | 本体、USBレシーバー、動作確認用単3形乾電池1本、取扱説明書/保証書 |
| 販路 | バッファローダイレクト限定(Amazon.co.jp/楽天市場/Yahoo!ショッピングの公式ストア)。一般量販店での取扱なし |
DPIは500/800/1,200の3段階と控えめですが、トラックボールでは「ボールを弾く距離」で実効速度が変わるので、ゲーミングマウスのような高DPIは必要ありません。DPIの数字が実際の使い勝手にどう効くかは、用語解説でまとめています。
バッファローが「初めてのトラックボール」で狙ったもの
バッファローはマウスを長く手掛けてきましたが、トラックボールは今回が初めてです。PC Watchの開発者インタビューによれば、企画担当者は既存製品への不満を3つに絞り込んだといいます。本体が大きすぎて手に合わないこと、接続切替やDPI切替のボタンが底面にあって本体を裏返す必要があること、そしてスクロールが遅いことです。
この3点に対する答えが、そのままBSTBB700Xの設計になっています。奥行きは約117mmと親指操作型としては短く、右側面には薬指と小指を預けるレストが付きます。切替ボタン類は天面中央に集め、電源スイッチも底面ではなく側面のスライド式にしました。そしてホイールには磁力でラッチ感を出す金属製の高速スクロールホイールを採用しています。
開発コンセプトは「手のひらに、しっくり。」。既製品が合わなかったから自分たちで作った、という経緯は、初参入の製品としては筋が通っています。
注目ポイント1:6,990円で3台切替、しかも天面ボタン
BSTBB700Xの最大の特徴は、この価格で3台のデバイスを登録できることです。内訳は2.4GHzレシーバー接続が1台、Bluetoothが2台。天面中央の接続先切替ボタンを押すごとに順番に切り替わり、LEDの色と位置でどの端末につながっているかが分かります。
比較対象を挙げると分かりやすいと思います。ロジクールのERGO M575SPは税込8,470円で、Logi BoltかBluetoothのどちらか1台にしかつながらず、切替は底面のボタンです。MX ERGO Sは天面ボタンで切り替えられますが、登録できるのは2台で、価格は19,580円。つまり「天面切替で3台」という仕様は、この2機種のどちらも持っていない組み合わせです。
MacとiPadのように複数の端末を机の上で使い分けている人にとって、切替ボタンが底面にあるかどうかは毎日効いてきます。本体を持ち上げて裏返す動作は、1回なら何でもなくても、1日に何十回となると確実に面倒です。BSTBB700Xがここを天面に置いたのは、価格を考えると素直に評価できる点です。
注目ポイント2:金属製の高速スクロールホイールとチルト
もう1つの目玉が、金属製の高速スクロールホイールです。ホイール内部に磁力でラッチ感を作る機構を持ち、機械的な摩擦が少ないため、指で弾くと慣性で回り続けます。長いWebページや大きな表計算シートを一気に送る用途で効く仕組みで、ロジクールのMX Masterシリーズで「電磁スクロール」として知られている方式に近い考え方です。
ホイールは左右にも倒せて、横スクロールに対応します。ただし横スクロール時は高速スクロールが効かない点は公式に明記されています。
この価格帯のトラックボールで高速スクロールホイールを載せている機種は、私の知る限りほぼありません。M575SPは通常のノッチ付きホイールですし、MX ERGO Sもチルトはあるものの高速スクロールではありません。M575SPからの乗り換えを考えている人にとって、この差はかなり大きいはずです。
注目ポイント3:単3形1本で最大約2年半
電源は単3形乾電池1本で、想定使用可能時間は最大約2年6か月。算出条件は「1日8時間のPC操作のうち5%をマウス操作に割り当てた場合」で、自然放電を考慮しない社内計算値なので保証値ではありません。とはいえM575SPの最長約18か月と比べても長く、電池交換をほとんど意識しなくてよい水準です。
充電式のMX ERGO Sは最長約120日ごとにUSB-Cで充電する必要があります。充電池は数年で劣化しますし、充電を忘れると使えません。乾電池駆動は「重くなる」「充電できない」という欠点と引き換えに、劣化の心配がなく、切れたらコンビニで買える安心感があります。トラックボールは机から動かさない機器なので、重量の欠点はほぼ相殺されます。
ニッケル水素充電池にも対応しているので、エネループを1本入れておけばランニングコストもほぼゼロです。
注目ポイント4:静音スイッチと、ベタつかない外装
ホイールチルトを除く全ボタンに静音スイッチを採用しています。左右クリック、ホイールクリック、進む・戻るの計5か所が対象で、PC Watchの実機レビューでも「チルトを除きほぼ無音」と評価されています。Web会議中にクリック音がマイクに乗るのを避けたい人には、この点だけでも選ぶ理由になります。
もう1つ、地味ながら長く使う上で重要なのが外装です。BSTBB700Xは底面の滑り止め部以外にラバーコーティングを使っていません。ラバーコートは手触りがよい反面、数年で加水分解してベタつきます。トラックボールは5年10年と使う人が多い機器なので、この選択は理にかなっています。
ボールは定番の34mm径で、人工ルビーの3点支持球で受けています。34mmはM575SPやMX ERGO Sと同じサイズなので、交換用のボールも流用しやすいはずです。
専用ソフト「マウスカスタム+」はWindows専用
ボタン割り当てには公式ソフト「マウスカスタム+」を使います。2026年9月2日配信のVer.1.02でBSTBB700シリーズに対応しました。進む・戻るなどのボタンにコピー、貼り付け、画面キャプチャといった機能を割り当てられます。
特徴的なのは、インストールと実行にWindowsの管理者権限が不要なことです。会社支給のPCで権限が制限されている人でも導入できます。
ただし対応OSはWindows 11/10のみで、macOSには対応していません。Macで使う場合、本体の接続自体は問題ありませんが、ボタンの割り当て変更はできない点は押さえておいてください。私のようにMacが主戦場の人には、ここは正直に「弱い」と書いておきます。
気になるポイント
発売直後の公開情報と実機レビューから、購入前に知っておくべき点をまとめます。
- マウスカスタム+はWindows専用: Macではボタン割り当てを変えられません。macOSの標準機能で「進む・戻る」は動きますが、それ以上のカスタマイズは不可です
- 手が大きい人には小さいかもしれない: コンパクト設計が売りである分、Yahoo!ショッピングの購入者レビューには「手のひらが大きいと小さく感じる」という指摘があります。M575SPと同等のサイズ感と考えてください
- 横スクロールは高速スクロール非対応: チルト時は通常の速度です
- 保証期間の表記が2種類ある: 公式の製品仕様表では6か月、直販ストア(Amazon/楽天/Yahoo!)の商品ページでは1年と記載されています。直販限定モデルなので実質1年と考えてよさそうですが、購入時に確認してください
- 重量表記の揺れ: 公式仕様は約150g(電池含む)、PC Watchや直販ページには約128g(電池含まず)とあります。差は乾電池1本分です
- クーポンは先着1,200台: 9月13日までですが、上限に達した時点で終了します。9月6日時点でAmazonの商品ページにクーポン表示が見当たらないという報告もあるので、購入前にクーポンの有無を確認してください
どんな人に向くか
M575SPを検討していたが、3台切替がほしい人
M575SPは1台接続で、切替は底面です。複数のPCやタブレットを1つのトラックボールで使い回したいなら、BSTBB700Xの方が2,000円近く安い上に、天面ボタンで3台を切り替えられます。この用途では明確にBSTBB700Xが有利です。
長いページや表を扱う仕事の人
高速スクロールホイールは、長大なExcelシートやログ、Webページを扱う人ほど効きます。エントリー価格帯でこの機構を載せた機種は貴重です。
トラックボールが初めての人
親指操作型は、人差し指・中指で操作するタイプより慣れるのが早いとされています。PC Watchのレビューでも「初めてでも約2日で違和感なく使えた」とあり、本体が通常のマウスに近いサイズなのも入りやすさにつながります。6,990円(クーポン適用で5,990円)なら、「合わなかった」ときの傷も浅く済みます。
ちなみに、ゲーミング用途でマウスを選ぶなら話は別で、トラックボールは向きません。FPSやMOBAで使うマウスを探している人は、軽量機を集めたおすすめ記事を参照してください。
競合製品との比較
親指操作型を中心に、定番のトラックボールと並べます。価格は各社公式の直販価格(税込)、駆動時間はメーカー公称値です。
| 製品 | 価格 | 接続台数・切替 | 電源・駆動時間 | 重量 |
|---|---|---|---|---|
| バッファロー BSTBB700X | 6,990円 | 3台・天面ボタン | 単3形×1・最大約2年半 | 約150g(電池含む) |
| ロジクール ERGO M575SP | 8,470円 | 1台・底面ボタン | 単3形×1・最長約18か月 | 145g(電池含む) |
| ロジクール MX ERGO S | 19,580円 | 2台・天面ボタン | 充電式・最長約120日 | 259g |
| エレコム DEFT PRO(M-DPT1MRXBK) | 実売8,000〜10,500円前後 | 有線/2.4GHz/Bluetoothの3WAY | 単3形×1・最長約300日 | 約162g(電池含まず) |
BSTBB700Xの立ち位置は「M575SPより安く、MX ERGO Sに近い切替性能」です。MX ERGO Sにはチルト角度の調整機構やプレシジョンモードといった上位機ならではの装備があり、金属プレートによる安定感も別格ですが、価格は約3倍。3台切替と高速スクロールという実務で効く2点だけを見れば、BSTBB700Xの方が上です。
エレコムのDEFT PROは人差し指操作型なので操作感が根本的に違いますが、有線を含む3WAY接続と44mmの大玉が特徴で、精密操作を重視する人に選ばれています。親指型で迷っているなら比較対象からは外してよいと思います。
MX ERGOの前世代モデルについては、当サイトで以前に取り上げています。上位機がどういう設計思想で作られているかを知る参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
- QBSTBB700Xはどこで買えますか?
- A
バッファローダイレクト限定モデルで、Amazon.co.jp・楽天市場・Yahoo!ショッピングの公式ストアで販売されています。一般の家電量販店では扱っていません。
- QMacでも使えますか?
- A
2.4GHzレシーバーとBluetoothのどちらでも接続でき、macOS 10.9以降に対応しています。ただしボタン割り当てソフト「マウスカスタム+」はWindows専用です。
- Q3台の切替はどうやりますか?
- A
天面中央の接続先切替ボタンを押すごとに、2.4GHz接続1台とBluetooth接続2台の間で順番に切り替わります。本体を裏返す必要はありません。
- Q電池はどれくらい持ちますか?
- A
単3形アルカリ乾電池1本で、想定使用可能時間は最大約2年6か月です。1日8時間のPC操作のうち5%をマウス操作に割り当てた場合の社内計算値で、保証値ではありません。
- Q発売記念クーポンはいつまでですか?
- A
2026年9月13日(日)までで、対象ストア合計先着1,200台に達した時点で終了します。適用後の価格は税込5,990円です。
まとめ:エントリー価格帯に「3台切替+高速スクロール」を持ち込んだ1台
バッファロー BSTBB700Xは、初参入とは思えないほど狙いがはっきりしたトラックボールです。
- 税込6,990円、9月13日まで先着1,200台は5,990円
- 2.4GHz+Bluetooth 2台の3台切替を天面ボタンで。M575SPにもMX ERGO Sにもない組み合わせ
- 金属製の高速スクロールホイールとチルト。この価格帯では珍しい装備
- 単3形1本で最大約2年半、静音スイッチ、ベタつかない外装
- 弱点はマウスカスタム+がWindows専用なことと、手の大きい人には小さめなこと
現時点での評価
発売直後の公開情報と国内の実機レビューをもとにした採点で、実機を使い込んだ評価ではありません。
- 接続・切替:★★★★★ 5.0(3台・天面ボタン。この価格で最上位クラス)
- スクロール・操作系:★★★★☆ 4.5(金属製高速スクロール+チルト。横は高速非対応)
- 電源・耐久設計:★★★★☆ 4.5(単3形1本で約2年半・ラバーコート不使用)
- ソフトウェア:★★☆☆☆ 2.5(Windows専用。Macではボタン割り当て不可)
- コスパ:★★★★★ 5.0(6,990円・クーポン適用で5,990円)
- 総合:★★★★☆ 4.5
トラックボールは一度手に馴染むと何年も使い続ける道具です。その入口として、6,990円で3台切替と高速スクロールが付いてくるBSTBB700Xは、いま最も勧めやすい選択肢だと思います。Macユーザーはソフトの制約だけ承知の上で、Windowsユーザーはほぼ死角なしです。クーポンの期限は9月13日なので、気になっている人は早めに確認してください。





