4Kテレビのハイエンド市場は、ここ数年ですっかり「ミニLED液晶 対 有機EL」の二強構図になっていました。その液晶側の頂点に立っていたのが、2024年に登場したソニーのフラッグシップ「BRAVIA 9(XR90)」です。AV Watchアワードで2024年・2025年と液晶大賞を連覇し、有機ELを含めた総合トップにも選ばれた、液晶テレビとして非常に高い評価を受けたモデルでした。
そのBRAVIA 9が、わずか2年で世代交代します。2026年5月28日に発表された新型が「BRAVIA 9 II(XR90M2シリーズ)」です。型番末尾の「II(マーク2)」と聞くと小幅なマイナーチェンジを想像してしまいますが、中身はまったく違います。ブラビア初の「RGB Mini LED(True RGB)」バックライトを搭載し、液晶テレビの色・輝度・視野角・消費電力にかかわる画質の土台から作り直してきた1台です。
この記事では、前世代「BRAVIA 9」と新世代「BRAVIA 9 II」を1対1で比較しながら、「2年で何がどれだけ変わったのか」「True RGBとは結局どんな技術なのか」「買い替える価値はあるのか」を、できるだけ分かりやすく深掘りしていきます。私自身、リビングでソニーの有機ELブラビア(K-55XR80)を毎日使っている立場から、液晶か有機ELかで迷っている方に向けた本音も交えてお伝えします。発表直後の注目モデルですので、ぜひ最後までご覧ください。
結論:前世代から「画質の心臓部」が変わったモデル
先に要点だけまとめます。細かい技術解説は後半で掘り下げますので、まずはここで全体像をつかんでください。
- 最大の違い:バックライトが「青色ミニLED+量子ドット」から、ブラビア初の「RGB Mini LED(True RGB)」へ変わった
- 強化点:色域・カラーボリューム・ピーク輝度・視野角・低反射・省電力が世代をまたいで大きく向上
- 発売・価格:65/75/85V型は2026年6月13日発売、115V型は9月19日発売。価格は65V型で約66万円から(市場想定価格・税込)
向いている人:明るいリビングでハイエンド液晶ならではの高輝度・広色域・低反射を重視する方/前世代BRAVIA 9や他社ハイエンドからの買い替えを検討している方/大画面で多用途(映画・スポーツ・ゲーム)に使いたい方。
慎重に考えたい人:完全な暗室で映画の漆黒を最優先したい方は、自発光の有機ELとの比較も必要です。予算重視なら下位の「BRAVIA 7 II」も選択肢になります。
BRAVIA 9 II スペック一覧
まずは新型「BRAVIA 9 II」の基本スペックを押さえておきましょう。65V型・75V型・85V型は2026年6月13日発売、シリーズ最大の115V型のみ少し遅れて2026年9月19日発売です。価格はすべてオープン価格で、以下は市場想定価格(税込)になります。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 製品名 | SONY BRAVIA 9 II(XR90M2シリーズ) |
| 型番 | K-115XR90M2 / K-85XR90M2 / K-75XR90M2 / K-65XR90M2 |
| 発売日 | 65/75/85V型:2026年6月13日/115V型:2026年9月19日 |
| 価格(市場想定価格・税込) | 65V型 約66万円/75V型 約93.5万円/85V型 約132万円/115V型 約660万円 |
| パネル | 4K液晶(RGB Mini LEDバックライト搭載/倍速駆動) |
| 解像度 | 3,840×2,160 |
| 映像処理プロセッサー | プロセッサー「XR」 |
| 主要画質技術 | RGB トリルミナス マックス/RGB バックライト マスタードライブ プロ/Luminance Booster Pro/XR コントラスト ブースター 40/XR クリアイメージ |
| 低反射技術 | Immersive Black Screen Pro(115V型を除く) |
| 視野角技術 | X-Wide Angle Pro |
| 対応HDR | HDR10/HLG/Dolby Vision |
| 映画・音響関連 | IMAX Enhanced/Dolby Atmos/DTS:X対応 |
| チューナー | 地上デジタル×3/BS・110度CS×3/BS4K・110度CS4K×3 |
| 録画 | 外付けHDD対応、2番組同時録画対応 |
| OS | Google TV |
| HDMI | 4系統(入力3・4がHDMI 2.1、4K120p/VRR/ALLM対応、eARCは入力3のみ) |
| ゲーム連携 | オートHDRトーンマッピング、コンテンツ連動画質モード(PS5連携) |
| スピーカー | Acoustic Multi-Audio+(65/75/85V型:8スピーカー・実用最大出力80W/115V型:12スピーカー・実用最大出力85W) |
| スタンド | 65-85V型:センタースタンド(ミラージュスタンド意匠)/115V型:専用スタンド |
| リモコン | 音声検索対応リモコン(無線)、ブラビア初の「TVer」ボタン搭載 |
OSにはGoogle TVを搭載しており、Netflix、Prime Video、Disney+、Hulu、TVer、ABEMA、U-NEXT、Apple TV、YouTube、DAZN、そしてソニー独自のSONY PICTURES COREなど、主要な動画配信サービスにひととおり対応します。リモコンには各サービスへのダイレクトボタンも用意されています。
スペック表の中の「HDR10」「Dolby Vision」といったHDR規格は、テレビ選びでつまずきやすいポイントの一つです。なお、表に記載しているHDR各規格の違いと、どの機器が何に対応しているのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。4Kテレビの実力を引き出すうえで欠かせない基礎知識ですので、あわせてご覧ください。
前世代「BRAVIA 9」から何が変わった? ひと目でわかる進化点
この記事の主役は、何といっても「前世代からの進化」です。先に結論を表で示します。前世代「BRAVIA 9(XR90、2024年モデル)」と新世代「BRAVIA 9 II(XR90M2、2026年モデル)」を、主要項目で1対1に並べてみました。
| 比較項目 | 前世代:BRAVIA 9(XR90) | 新世代:BRAVIA 9 II(XR90M2) |
|---|---|---|
| 発売 | 2024年8月10日 | 2026年6月13日(115V型は9月19日) |
| サイズ展開 | 65 / 75 / 85V型 | 65 / 75 / 85 / 115V型 |
| バックライト方式 | 青色ミニLED + 量子ドット | RGB Mini LED(True RGB/独立駆動) |
| 色再現技術 | XR トリルミナス プロ | RGB トリルミナス マックス |
| バックライト制御 | XR バックライト マスタードライブ | RGB バックライト マスタードライブ プロ |
| 高輝度・コントラスト | High Peak Luminance/XR コントラスト ブースター 30 | Luminance Booster Pro/XR コントラスト ブースター 40 |
| カラーボリューム | 基準 | 前世代比 約2倍(ソニー公称) |
| BT.2020色域カバー率 | 実測 約70〜78%台(媒体測定値) | 100%(BT.2020面積比の代表値) |
| ピーク輝度(媒体測定値) | 10%窓 約3,144cd/m²/全白 約925cd/m² | 簡易測定でピーク5,000nit超 |
| 低反射技術 | X-Anti Reflection | Immersive Black Screen Pro(115V型除く) |
| 視野角技術 | X-Wide Angle | X-Wide Angle Pro |
| 消費電力(65V型・定格) | 350W | 253W(約28%減) |
| スピーカー | Acoustic Multi-Audio+(70W/底面・フレーム配置) | Acoustic Multi-Audio+(65/75/85V型 80W/画面上部・横一列へ再配置) |
| スタンド | 標準/内側/サウンドバーの3ポジション | ミラージュスタンド(センタースタンド回帰) |
| 新UX | なし | My Cinema/TVerボタン/ブラビア直接接続 |
| 価格(65V型・市場想定価格税込) | 約49.5万円 | 約66万円 |
こうして並べると、ほとんどの行で技術名が「XR系」から「RGB系」へ置き換わっていることに気づきます。これは小手先のチューニングではなく、バックライトという心臓部の発光方式そのものが変わったことの表れです。価格は65V型で約49.5万円から約66万円へと上がっていますが、その差額の意味を理解するためにも、まずは最大の進化点である「True RGB」を掘り下げていきましょう。
最大の進化「True RGB/RGB Mini LED」とは何か
BRAVIA 9 IIを語るうえで避けて通れないのが、ソニーが新たに掲げた「True RGB」というキーワードです。これは、赤・緑・青(RGB)の3色のLEDを個別に発光・制御するRGB Mini LEDバックライトを採用したブラビア(BRAVIA 9 IIとBRAVIA 7 II)を指す訴求名称です。言葉だけ聞くと難しそうですが、仕組みを知ると「なるほど、それは確かに別物だ」と納得できるはずです。

従来の「青色ミニLED+量子ドット」と何が違うのか
前世代のBRAVIA 9を含む、これまでのハイエンド液晶テレビのバックライトは、青色に光るミニLEDを敷き詰め、その上に量子ドットシート(青い光の波長を変換して赤や緑を作る層)を重ねて白色光を作っていました。そして、液晶シャッターを通った光を、最後に赤・緑・青の「カラーフィルター」に通して、ようやく映像の色が決まる、という流れです。
この方式には、構造上どうしても避けられない弱点がありました。光がカラーフィルターを通過するとき、目的の色以外の波長は遮断(吸収)されてしまうため、せっかくバックライトが放った光エネルギーの多くが熱として無駄になってしまうのです。鮮やかな赤を出そうとすれば、緑や青の成分はフィルターでカットされて捨てられ、それが発熱となって輝度の上限を縛っていました。
これに対してBRAVIA 9 IIの「True RGB(RGB Mini LED)」は、発光源そのものが赤・緑・青のLEDチップで、それぞれを独立して光らせます。バックライトの段階ですでに純度の高いRGBの光が出ているため、光を遮って色を作るカラーフィルターに頼る度合いが大きく下がります。ソニー自身も「従来の液晶はカラーフィルターのみで色付けしていたが、新方式ではバックライトでも色を制御できる」と説明しており、これが画質・効率の両面に効いてくる、まさに構造からの進化なのです。
ソニー史上最大のカラーボリューム
True RGB化による最初の恩恵が、色の表現力の飛躍的な拡大です。ソニーはBRAVIA 9 IIのカラーボリューム(明るさと色域を掛け合わせた立体的な色彩の表現力)を、前世代BRAVIA 9比で約2倍と公称しています。さらに、放送・配信・映画の次世代基準であるBT.2020色域のカバー率について、AV Watchのレビューでは新型が100%(BT.2020面積比の代表値)、前世代が80%未満と紹介されています。前世代BRAVIA 9はAV Watchの実測でBT.2020カバー率が約70〜78%台でしたから、その伸び幅の大きさがうかがえます。

カラーボリュームが大きいということは、平たく言えば「どんなに明るいシーンでも、色が白っぽく褪せずに濃いまま出せる」ということです。真夏の太陽に照らされた赤い車のボディや、燃え盛る炎のオレンジなど、明るさと鮮やかさを同時に求められる場面ほど、その差は分かりやすく出ます。この強みを支えているのが「RGB トリルミナス マックス」と「Luminance Booster Pro」という新技術で、映像の中で使われていない色のLEDの電力を、必要な色のLEDへ集中的に振り分けることで、色の純度を保ったまま局所的に強い輝きを生み出しています。
ピーク輝度はさらに上へ
明るさそのものも、しっかり底上げされています。ソニーはピーク輝度の具体的な数値を公式には公表していませんが、AV Watchの実機レビューでは、スペクトロメーターを使った簡易測定でピーク輝度が5,000nitを超えたと報告されています。前世代BRAVIA 9もAV Watchの実測で10%窓 約3,144cd/m²、全白 約925cd/m²という当時としては圧巻の数値でしたから、それをさらに上回ってきたことになります。
ここで誤解のないよう補足しておくと、ピーク5,000nit超という数値は、AV Watchの実機レビュー(Sponsored記事)におけるスペクトロメーターでの簡易測定値です。ソニー公式が公表した公称ピーク輝度ではなく、測定条件によって数字は変動します。同じく前世代の数値もAV Watchの実測値です。あくまで「媒体が測ったらこうだった」という目安として捉えてください。それでも、媒体測定値を見る限り、前世代BRAVIA 9でも高かったピーク輝度を、BRAVIA 9 IIがさらに上回っていることが分かります。明るい部屋でも映像が力強く見える、HDRコンテンツのハイライトが眩しいほど輝く、という体験は、このピーク輝度の高さが支えています。
ハロー(光漏れ)低減と省電力化
True RGBの面白いところは、効果が色や輝度だけにとどまらない点です。
液晶テレビの泣きどころに「ハロー(ブルーミング)」があります。暗い背景に浮かぶ星や字幕の周りに、バックライトの光がぼんやり漏れて見える現象です。従来の白色(青色基準)バックライトでは、この漏れた光が白く出るため、被写体本来の色との差が目立っていました。ところがRGB Mini LEDでは、バックライトの発光色を映像の色に合わせて変えられるため、たとえば赤い光点の周りには赤い光しか漏れません。漏れる光が被写体と同じ色になることで、ハローそのものをゼロにするというより、「色付きの自然な滲み」に変えて違和感を減らす、という賢い設計になっています。
そしてもう一つが省電力です。バックライトの段階で必要な色を直接作れるため、カラーフィルターで不要な光を捨てるロスを抑えやすく、発光効率を高められます。同じ明るさをより少ない電力で出せるようになり、実際、65V型の定格消費電力は前世代の350Wから253Wへと、約28%下がっています(公式仕様表をもとにした単純計算)。画質を上げながら電気代は下がるという、ユーザーにとって素直にうれしい進化です。
画質を底上げするその他の新技術
True RGBが主役であることは間違いありませんが、BRAVIA 9 IIには「日々の視聴のしやすさ」を底上げする技術も新たに加わっています。スペック表の数字には表れにくい、しかし実際の使用感を大きく左右する部分です。
映り込みを大きく抑える超低反射「Immersive Black Screen Pro」
個人的に最も注目しているのが、新開発の超低反射技術「Immersive Black Screen Pro」です。日本の家庭のリビングは、昼は窓から外光が入り、夜は照明が点いている環境がほとんどで、テレビ画面への映り込みは避けられない悩みでした。特に映画の暗いシーンでは、自分の姿や照明、背後の家具が画面に映り込んで没入感が削がれてしまいます。

この技術は、映り込む光量を抑えつつ、映り込んだ像をぼかすことで、コントラスト感を保ったまま映り込みを大幅に低減します。素材から生産工程までソニーがBRAVIA 9 II用に新規開発したもので、従来のノングレア(アンチグレア)パネルにありがちな「コントラストの低下」や「画面のざらつき」を避けながら、反射が非常に目立ちにくい見え方を実現しているのが新しい点です。AV Watchの実機レビューでも、近づかないと自分の姿が分からないほどで「実質的には“無反射”と呼びたくなるほど」と表現されています。ただし注意点として、この超低反射技術が載るのは65V型・75V型・85V型の3サイズで、シリーズ最大の115V型には搭載されません。明るい部屋での視聴が多い方ほど、この差は効いてきます。
斜めから見ても色褪せない「X-Wide Angle Pro」
液晶テレビのもう一つの弱点が、斜めから見たときに色が褪せて見える「視野角」の問題です。家族みんなでテレビを囲むリビングでは、正面の特等席に座れる人ばかりではありません。

従来の液晶は、白いバックライトの光を液晶セルとカラーフィルターで色に変えていたため、光の波長ごとに広がり方が違い、斜めから見ると色が変わってしまいやすいという課題がありました。True RGBではバックライト側で直接色を作るため、カラーフィルターへの依存が下がり、斜めからの色変化が抑えられます。これも、RGB化という構造変更が副次的に効いている恩恵で、「X-Wide Angle Pro」として強化されています。リビングのどの席から見ても、本来の色で映像を楽しめるわけです。
なお、暗部から明部までのグラデーションを滑らかに描く「滑らかな階調表現」も新型の見どころです。

RGB各色を細かく制御できるようになったことで、夕暮れの空のような微妙な色の移り変わりでも、縞模様(バンディング)が出にくく、より自然な階調で表現できるようになっています。さらに超解像エンジン「XR クリアイメージ」が、地デジやネット動画のような情報量の少ないソースでも、ノイズを抑えながら精細感を引き上げてくれます。
結局、有機ELと比べてどうなのか
ここまで読んで、「それで、有機ELと比べてどうなの?」と思った方は多いはずです。テレビ選びで最後まで悩むのが、この「液晶か有機ELか」という問いだと思います。私自身がリビングで有機ELのブラビアを使っている立場も含めて、正直なところをお話しします。
まず、BRAVIA 9 IIが有機ELに対して明確に優位な点は、高輝度時の色の濃さと、画面全体が明るいシーンでの安定感です。有機ELは画面全体が明るくなると、パネル保護のために輝度を意図的に下げる仕組み(ABL)が働きやすく、明るいシーンで伸び悩むことがあります。一方、バックライト側でも色を制御でき、放熱にも余裕のあるTrue RGB液晶は、その制約を受けにくく、明るい部屋でも、明るいシーンでも、色を濃いまま力強く出せます。スポーツ中継や日中のニュース、明るいアニメなどを大画面で楽しむなら、この特性は大きな武器です。
一方で、正直に書いておくべき有機ELの強みもあります。それは、画素一つひとつを完全に消灯できる自発光ならではの「黒の沈み込み」と、画素単位のミクロな明暗表現です。完全な暗室で映画を観るような環境では、液晶である以上、有機ELの漆黒には構造的に一歩譲る場面が残ります。BRAVIA 9 IIはRGB個別制御でハローを大幅に抑え込んでいますが、それでも「ピクセル単位で光が消える」自発光の絶対的な黒とは出自が異なります。
つまり、明るいリビングで多用途に使うなら新世代のTrue RGB液晶、暗室で映画に没入する用途なら有機EL、という従来の住み分けの軸は残りつつ、その差はかなり詰まってきた、というのが私の見方です。ソニーの有機ELフラッグシップがどんな映像を見せるのかが気になる方は、QD-OLEDを積んだBRAVIA A95Lのレビューを読むと、液晶との性格の違いがよりはっきり掴めます。
また、ソニーだけでなくパナソニックやレグザの有機ELも含めて「結局どの有機ELが自分に合うのか」を整理したい方には、3メーカーを横並びで比較した記事も用意しています。液晶のBRAVIA 9 IIを検討するうえでも、対抗馬となる有機EL勢の実力を知っておくと判断がぶれません。
音・デザイン・使い勝手の進化
画質ばかり語ってきましたが、BRAVIA 9 IIは音と設置性、日々の操作性にも手が入っています。テレビは毎日触れる家電だけに、こうした地味な改良が満足度を大きく左右します。
スピーカーを画面上部・横一列へ再配置
内蔵オーディオは引き続き「Acoustic Multi-Audio+」ですが、スピーカーの配置が大きく変わりました。前世代は画面の底面とフレーム部に音響ユニットを分散配置していたのに対し、BRAVIA 9 IIでは高音・中音・低音のユニットを画面上部の横一列に集約しています。

実用最大出力も底上げされています。前世代BRAVIA 9が70Wだったのに対し、BRAVIA 9 IIは65/75/85V型で8スピーカー・80Wに強化されました。115V型はさらに12スピーカー構成で、実用最大出力は85Wです。そして数字以上に効いてくるのが、配置の見直しです。大画面化が進むと、画面下から音が出る構成では、映像の中の人物の口元と音の発生源がずれてしまいます。すべての音域を画面上部の同じ高さから出すことで、音の出どころと映像の中心が一致し、セリフや効果音の定位が自然になり、左右の分離感も向上する、という狙いです。「声がちゃんと画面の真ん中から聞こえる」というのは、地味ですが日々の視聴で効いてくる進化です。
配線が消える「ミラージュスタンド」とセンタースタンド回帰
設置性も実用的に進化しました。前世代は標準・内側・サウンドバー用の3ポジションを選べるスタンドでしたが、新型(115V型を除く)は1本足のセンタースタンドへと回帰しています。幅の狭いテレビ台にも置きやすくなり、設置のハードルが下がりました。

このセンタースタンドには「ミラージュスタンド」という意匠が採用されており、透明なレンチキュラーパネル(微細なレンズを並べたシート)で光を拡散させることで、スタンドそのものや背面のケーブル類を視界から消し去ります。まるで黒い画面だけが宙に浮いているように見える、というデザインです。映像以外のノイズになる情報を削ぎ落として没入感を高める、ソニーらしい作り込みだと感じます。
My Cinema/TVerボタン/サウンドバー不要の「ブラビア直接接続」
使い勝手の新機能も見逃せません。一つ目が「My Cinema」。リモコンのボタンから、映画視聴に最適な設定をワンタッチで呼び出せるプリセット機能で、「ディレクターズカット(制作者の意図した映像を再現)」「デイタイム(明るい環境でも見やすく)」「ダイアログ(セリフを強調して聞き取りやすく)」の3種類が用意され、選んだあとにセリフの大きさも調整できます。
二つ目が、ブラビア初の「TVer」ボタンです。リモコンの「テレビ」ボタンのすぐ下という、日常的に押しやすい一等地に配置されました。地上波のリアルタイム視聴から見逃し配信へ、ワンボタンで行き来できるわけで、放送と配信の垣根がなくなりつつある今の視聴スタイルを的確に捉えた変更です。
三つ目が「ブラビア直接接続」。これまでワイヤレスのサブウーファーやリアスピーカーを足すには、間にサウンドバーやAVアンプが必要でした。BRAVIA 9 IIでは、テレビ本体に直接オプションスピーカーを無線でつなげるようになり、サウンドバーなしでも本格的なサラウンド環境を組めます。対応スピーカーはBRAVIA Theatre Sub 9/Sub 8/Sub 7と、Rear 9/Rear 8で、サブウーファーとリアスピーカーの同時接続も可能です。テレビ台にサウンドバーを置くスペースがない方や、配線を増やしたくない方にとって、地味ながら実用的な進化と言えます。
ラインアップ・価格とBRAVIA 7 IIとの違い
BRAVIA 9 IIは、フラッグシップらしく大画面に振ったラインアップです。あらためて価格を整理しておきましょう(市場想定価格・税込)。
| 型番 | サイズ | 発売日 | 価格 |
|---|---|---|---|
| K-65XR90M2 | 65V型 | 2026年6月13日 | 約66万円 |
| K-75XR90M2 | 75V型 | 2026年6月13日 | 約93.5万円 |
| K-85XR90M2 | 85V型 | 2026年6月13日 | 約132万円 |
| K-115XR90M2 | 115V型 | 2026年9月19日 | 約660万円 |
115V型の約660万円は、価格・サイズともに一般的なリビング向けというより、大画面ホームシアターや法人・展示用途も視野に入る特別なモデルです。多くの家庭で現実的に選択肢になるのは65V型〜85V型でしょう。
同時に、同じTrue RGB技術を採用したワンランク下のモデル「BRAVIA 7 II(XR70M2シリーズ)」も発表されています。50V型〜98V型まで6サイズと幅広く、より手の届きやすい価格帯です。両者の違いを整理すると次のようになります。
| 比較項目 | BRAVIA 9 II(フラッグシップ) | BRAVIA 7 II(プレミアム) |
|---|---|---|
| シリーズ位置づけ | RGB Mini LEDフラグシップ | RGB Mini LEDプレミアム |
| サイズ展開 | 65 / 75 / 85 / 115V型 | 50 / 55 / 65 / 75 / 85 / 98V型 |
| 高輝度・コントラスト | Luminance Booster Pro/XR コントラスト ブースター 40 | Luminance Booster/XR コントラスト ブースター 20 |
| カラーボリューム(公称) | 従来BRAVIA 9比 約2倍 | 従来BRAVIA 7比 約1.5倍 |
| 低反射「Immersive Black Screen Pro」 | あり(115V型を除く) | なし |
| 視野角 | ◎(X-Wide Angle Pro) | ○(標準的な広視野角) |
| 共通点 | プロセッサーXR、XRクリアイメージ、Google TV、各3チューナー、HDMI 2.1、PS5連携、My Cinema、ブラビア直接接続 | 同左 |
両モデルは映像エンジンやチューナー、True RGBの基本技術を共有しており、決定的な違いはバックライトの物量(輝度・分割数)と、超低反射フィルムの有無、コントラスト制御の等級にあります。絶対的な画質と明るい部屋での見やすさを最優先するならBRAVIA 9 II、コストと画質のバランスや、より小さいサイズが欲しいならBRAVIA 7 II、という棲み分けです。
なお、ソニーは発売を記念して、対象の4Kブラビアと対象のサウンドバー・ホームシアター製品などをセット購入すると最大16万円のキャッシュバックを行うキャンペーン(購入期間2026年5月28日〜8月18日)を実施します。本体だけでなく音響まで含めてソニーで揃えるなら、こうした施策も購入時期の判断材料になります。
2026年のライバル機たち
2026年のハイエンドテレビ市場は、各社の技術哲学がはっきり分かれた面白い年になっています。BRAVIA 9 IIを検討するなら、ライバルの顔ぶれも知っておいて損はありません。
液晶側で同じくRGB Mini LEDに踏み込んでいるのが、TVS REGZA(レグザ)です。レグザは2026年春モデルで「RGB Mini LED液晶」を100インチ級から43インチまで多数展開し、自ら「RGB Mini LED元年」を掲げて攻勢をかけています。ソニーと真っ向からぶつかる陣営です。さらにTCLはスーパー量子ドット×Mini LEDで全画面BT.2020 100%再現をうたい、ハイセンスもRGB Mini LEDの上位「RGB UXS」シリーズを投入するなど、液晶ハイエンドは一気ににぎやかになりました。
一方、有機EL側もただ黙ってはいません。LGの「G5」やパナソニックの「Z95B」、そしてレグザの「X9900R」といった次世代RGB有機EL採用機が登場し、有機ELの弱点だった全白輝度を大きく伸ばしてきています。特にレグザX9900Rは、新世代のRGBパネルで輝度を前モデル比1.35倍に高めた意欲作で、「明るい部屋では液晶一択」とは言い切れないところまで有機ELも進化しています。BRAVIA 9 IIの対抗馬として、有機ELのトップがどこまで来ているのかを知るのに格好の1台です。
整理すると、2026年は「黒の表現を保ちながら明るさを上げる“タンデム/RGB有機EL”陣営」と、「高い輝度と広色域を保ちながら光漏れを抑え込む“RGB Mini LED(True RGB)”陣営」のぶつかり合いです。その中でBRAVIA 9 IIは、媒体測定でマスターモニター級ともいわれた高い輝度と広色域、バックライト側で色を作れる効率の良さ、そしてPS5連携や音響エコシステムまで含めた総合力で、液晶の最高峰を狙う構図になっています。
よくある質問(FAQ)
- Q前世代「BRAVIA 9」との一番の違いは
- A
バックライト方式が「青色ミニLED+量子ドット」から「RGB Mini LED(True RGB)」に変わった点です。これによりカラーボリューム約2倍、BT.2020カバー率100%(代表値)、ピーク輝度の向上、視野角改善、約28%の省電力(65V型・定格)など、画質と効率が全面的に底上げされています。
- QTrue RGBやRGB Mini LEDって、有機ELより上なの?
- A
一概に上下は付けられません。明るいシーンや明るい部屋での色の濃さ・安定感はBRAVIA 9 IIが有利ですが、暗室での完全な黒や画素単位の明暗表現は自発光の有機ELに分があります。用途次第です。
- QHDR10+には対応していますか?
- A
公式仕様で対応がうたわれているのはHDR10/HLG/Dolby Visionです。HDR10+への対応記載はありません。映画向けにはDolby VisionとIMAX Enhancedに対応しています。
- Qゲーム用途(PS5)には向いていますか?
- A
HDMI 2.1対応端子(入力3・4)で4K120p・VRR・ALLMに対応し、PS5とのオートHDRトーンマッピングやコンテンツ連動画質モードも備えます。ただしHDMI 2.1は2系統まで、4K144Hz入力には非対応です。
- QBRAVIA 9 IIとBRAVIA 7 IIはどちらを選ぶべき?
- A
明るい部屋での反射対策や画質を最優先するならBRAVIA 9 II、価格とサイズ展開の広さを重視するならBRAVIA 7 IIが選びやすいです。BRAVIA 9 IIはImmersive Black Screen ProやXR コントラスト ブースター 40など、画質面の上位機能が強化されています。
- QBRAVIA 9 IIは4K144Hzに対応していますか?
- A
公式仕様では4K/120fps、VRR、ALLM、eARC、SBTMに対応しています。一方、AV Watchでは4K144Hz入力には対応しないと報じられています。PCで144Hz表示を狙う用途では注意が必要です。
- Q超低反射の「Immersive Black Screen Pro」は全サイズに付きますか?
- A
いいえ。65V型・75V型・85V型の3サイズに搭載され、シリーズ最大の115V型には搭載されません。明るい部屋での視聴が多い方は、このサイズ差に注意してください。
- Qいつ、いくらで買えますか?
- A
65/75/85V型は2026年6月13日発売で、市場想定価格(税込)は65V型 約66万円・75V型 約93.5万円・85V型 約132万円。115V型は2026年9月19日発売で約660万円です。
BRAVIA 9 IIはBRAVIA 9から買い替える価値がある?
ここまでの内容を、買い替え判断の視点でまとめておきます。前世代BRAVIA 9からの買い替え価値は、結局のところ視聴環境によって変わります。
明るいリビングで映画・スポーツ・ゲームを幅広く楽しむなら、True RGBによる色域拡大、ピーク輝度の向上、低反射のImmersive Black Screen Pro、視野角改善、そして省電力化の恩恵は大きく出ます。とくに「日中の明るい部屋でも色が褪せない」「窓や照明の映り込みが気になっていた」という方は、体感での満足度が高いはずです。
一方で、現在のBRAVIA 9にすでに満足していて、主に暗室で映画をじっくり観る使い方が中心なら、慌てて買い替える必要は薄いかもしれません。その場合は、実機の比較展示を見てから判断する方が確実です。BRAVIA 9も依然として高い実力を持つモデルですし、暗室での黒の表現という一点では、自発光の有機ELという選択肢も含めて検討する価値があります。
まとめ:True RGBが切り開く、液晶テレビの新しい頂点
BRAVIA 9 IIは、「マーク2」という控えめな名前からは想像できないほど、中身を根本から作り直してきたフラッグシップでした。最大の進化は、やはりブラビア初の「True RGB(RGB Mini LED)」バックライトです。
- 色:カラーボリュームが前世代比約2倍、BT.2020カバー率は100%(代表値)へ
- 輝度:媒体の簡易測定でピーク5,000nit超。明るいシーンでも色が濃いまま
- 見やすさ:超低反射のImmersive Black Screen Proと広視野角のX-Wide Angle Proで、明るい部屋でもどの席でも快適(低反射は115V型を除く)
- 効率:バックライト側で色を作る方式により発光効率を高め、65V型・定格で約28%の省電力(公式仕様の単純計算)
- 使い勝手:TVerボタン、My Cinema、サウンドバー不要のブラビア直接接続、ミラージュスタンド
価格は65V型で約66万円からと決して安くはありませんが、その差額は「色を作る心臓部そのものを刷新した」対価だと考えると納得できます。明るいリビングで多用途に大画面を使いたい方、液晶トップクラスの画質を求める方には、現時点で最有力の選択肢の一つです。
公開情報ベースの暫定評価
発売前のため、私はまだBRAVIA 9 IIの実機を試せていません。以下はあくまで、前モデルからの進化を踏まえつつ、公式仕様と媒体レビューをもとにつけた暫定スコアです。
- 画質ポテンシャル:★★★★★ 5.0(True RGBでカラーボリューム約2倍・媒体測定でピーク5,000nit超)
- 機能性:★★★★☆ 4.5(Google TV・My Cinema・ブラビア直接接続・TVerボタン)
- 設置性・デザイン:★★★★☆ 4.0(ミラージュ/センタースタンドで設置容易。ただし大型・重量級)
- ゲーム・PS5適性:★★★★☆ 4.0(4K120/VRR/ALLM・PS5連携。HDMI 2.1は2系統・4K144非対応)
- コスパ:★★★☆☆ 3.5(66万円〜。性能は突出しているが価格は高い)
- 総合注目度:★★★★☆ 4.5
※発売前の公開情報・公式仕様・媒体レビューをもとにした暫定評価です。実機レビュー後に評価を更新します。
私自身、リビングではソニーの有機ELブラビアで映画を観るのが毎日の習慣ですが、このBRAVIA 9 IIの「明るい部屋でも色が褪せない力強さ」は、有機ELとはまた違う魅力だと感じています。リビングが明るくて有機ELの黒が活かしきれない、でも明るい部屋でも画質に妥協したくない——そんな方にこそ向いた1台です。購入前には、ソニーストアや量販店で実機の反射・視野角・明るさをご自分の目で確認するのがおすすめです。
参考・出典
本記事のスペック・価格・技術情報は、以下の一次情報(メーカー公式)および二次情報(専門媒体)をもとにしています。本文中の測定値や評価は、各出典の記載に基づくものです。詳細はリンク先でご確認ください。
ソニー公式

AV Watch/株式会社インプレス


※ピーク輝度やBT.2020カバー率などの数値は、ソニーの公称値と、AV Watch(Sponsoredレビューを含む)の実機測定値が混在します。本文では「公称値」「媒体測定値」を区別して記載していますが、測定条件によって数値は変動します。最新・正確な仕様は、必ずソニー公式サイトでご確認ください。



