【平面駆動×開放型】ASUS ROG Kitharaとは|HIFIMAN協業の音を解説

4.0
ROG Kitharaのイヤーカップを接写した映像。背面がメッシュ状に開いた開放型構造がわかる オーディオ
ROG Kitharaのイヤーカップ。背面がメッシュ状に開いた開放型で、HIFIMAN協業の100mm平面駆動ドライバーを搭載する。引用: YouTube『音の真髄を極め、かつてないサウンド体験へ。』(https://www.youtube.com/watch?v=lFfJbjVyNOY)より

ゲーミングヘッドセットといえば、密閉型でソフトウェアの擬似サラウンドを効かせる——そんな常識を真っ向から覆す製品が登場しました。ASUSのROGブランドが2026年6月12日に発売する「ROG Kithara」です。

本機の核心は、ピュアオーディオの名門HIFIMANと協業した「100mm平面磁界駆動ドライバー」と、「開放型(オープンバック)エンクロージャ」という、ハイエンドオーディオそのものの構成にあります。想定価格は税込53,980円。ゲーミングヘッドセットとしては高価ですが、平面駆動の開放型ヘッドホンと考えれば、むしろ破格とも言える設定です。

この記事では、ROG Kitharaを「ゲーミングヘッドセット」としてではなく、あえて「オーディオ機器としてどうなのか」という視点から解説します。平面駆動とは何か、開放型の狙いと弱点、そして4.4mmバランス接続まで含めた拡張性を掘り下げます。ぜひ最後までご覧ください。

ROG Kitharaのイヤーカップを接写した映像。背面がメッシュ状に開いた開放型構造がわかる
ROG Kitharaのイヤーカップ。背面がメッシュ状に開いた開放型で、HIFIMAN協業の100mm平面駆動ドライバーを搭載する。引用: YouTube『音の真髄を極め、かつてないサウンド体験へ。』(https://www.youtube.com/watch?v=lFfJbjVyNOY)より

製品スペック一覧

まずはROG Kitharaの主要スペックを確認しましょう。

項目詳細
製品名ROG Kithara Gaming Headset
型番A702 ROG KITHARA/BLK
国内発売日2026年6月12日
価格帯税込 約53,980円前後
ドライバー100mm 平面磁界駆動型(HIFIMAN協業)
インピーダンス16Ω
再生周波数帯域8Hz〜55kHz
全高調波歪率(THD)0.1%未満
エンクロージャ開放型(オープンバック)
接続3.5mm/6.3mm/4.4mmバランス/USB Type-C
本体重量420g(ケーブル・マイク含まず)
イヤーパッドレザーレット+ファブリック/ベロア(交換式)
マイク着脱式 MEMSブームマイク(単一指向性)
ANC非搭載(構造上、遮音しない)

平面駆動ドライバーとは何が違うのか

一般的なヘッドホンの多くは「ダイナミック型」ドライバーを使います。これはボイスコイルを中心に円錐状の振動板を前後に動かす方式です。対して平面駆動(プレーナーマグネティック)型は、ナノメートル単位の極薄の膜全体を磁力で均一に振動させます。

この方式の最大の利点は、音への「反応の速さ(トランジェント特性)」です。膜が軽く均一に動くため、音の立ち上がりと立ち下がりが瞬時に行われ、余計な残響が乗りません。結果として、足音やリロード音といった微細な音が他の音に埋もれず、シャープな輪郭を保ったまま再生されます。HIFIMANの「NEO Supernano Diaphragm」という極薄振動板と、音波の乱れを抑える「Stealth Magnets」設計により、THD(歪率)0.1%未満という高い原音忠実性を実現しています。インピーダンスは16Ωと低く、スマホやコントローラー直挿しでも鳴らせますが、本来の力を引き出すにはある程度の出力があるアンプ環境が望ましい、という素性です。

開放型エンクロージャの狙いと弱点

ROG Kitharaは、ゲーミングで主流の密閉型ではなく、イヤーカップ背面がメッシュ状に開いた「開放型」を採用しています。

狙いは明確で、カップ内部で音が反射しないため、密閉型特有の「頭の中で鳴っている」閉塞感がなくなり、広大で立体的な音場が得られます。内部反射による低音のこもりも起きないので、低・中・高の各帯域が明瞭に分離し、複数の音が交差する場面でも音源の距離と方向を正確に掴めます。FPSでの定位の正確さは、海外メディアからも「トップティア(最高クラス)」と評価されています。

一方で、開放型には正直な弱点もあります。遮音性が皆無なため、音は周囲に漏れますし、環境音もそのまま耳に入ります。ASUS自身も「騒音の多い環境での使用は避けることを推奨」と明記しています。また低域のエネルギーが外へ逃げるぶん、密閉型のような重低音の“圧”は軽く感じられます。静かな自室でじっくり使うのに向く、という性格を理解しておきましょう。

接続の拡張性:USB-Cサウンドデバイスと4.4mmバランス

ROG Kitharaはアナログ有線接続が基本ですが、付属品が充実しています。PC・PS5・Switch・スマホなど多様な機器で使えるよう「USB Type-C to Dual-3.5mmアダプター」が同梱され、3.5mm・6.3mm・4.4mmバランスの変換にも対応します。特に注目したいのが4.4mmバランス接続への標準対応です。バランス接続は左右の信号を完全に分離して伝送する方式で、ノイズやクロストークを抑え、よりクリーンで解像度の高い音を引き出せます。据え置きDAC/ヘッドホンアンプやポータブルDAPと組み合わせれば、平面駆動ドライバーの潜在能力をさらに引き出せる——つまり本機は、将来的に「オーディオ沼」へ踏み込む入り口としても機能します。USBドングルや無線規格の寿命に縛られない、アナログ有線機ならではの長寿命性も魅力です。

ゲーム用途で見た強みと注意点

ゲーム用途では、平面駆動の速い応答と開放型の広い音場が、定位の正確さに直結します。海外のテストでも「コンクリートや草といった足音の材質まで聞き分けられる」と高く評価されています。特定帯域を強調するV字型ではなく、ニュートラルなチューニングを採るため、爆発音が足音をかき消さないのも競技向きです。

マイクは着脱式のMEMSブームマイクで、20Hz〜20kHzの広帯域とS/N比74dBという、ゲーミングとしては優秀なスペックです。ただし入力は完全アナログのため、ソフトウェアによるノイズキャンセリングは備わりません。指向性に優れる反面、破裂音(ポップノイズ)を拾いやすいので、マイク位置の物理的な調整が必要です。開放型ゆえに環境音も乗りやすい点と合わせ、静かな環境で使う前提と考えるとよいでしょう。

オーディオ機器としての立ち位置

5万円前後のゲーミングヘッドセットでの最大の対抗馬は、同じ平面駆動を積むAudeze Maxwell 2です。ただし設計思想は対照的で、Maxwell 2は密閉型+ワイヤレスで、強い低音と利便性が武器。対するKitharaはアナログ有線+開放型で、低音の“圧”は譲るものの、定位の精緻さと広い音場、中高域の見通しで上回ります。足音の判別や音源距離の把握では、Kitharaが明確なアドバンテージを持ちます。

音響を共同開発したHIFIMANのピュアオーディオ機(Edition XSなど)と比べると、KitharaはFPSで重要な左右の定位バランスをより厳密に整え、フルメタルフレームで耐久性を高めるなど、ゲーミング用途に最適化されています。「ハイファイ(高忠実度)の音をゲームにも持ち込む」という発想が、本機の核心です。

なお、この「ハイファイ(Hi-Fi)」という言葉が本来どういう意味で、ハイレゾと何が違うのかは、以下の記事で詳しく解説しています。オーディオ機器を選ぶうえでの基礎になる考え方ですので、あわせてご覧ください。

どんな人におすすめか

ROG Kitharaは、次のような方に向いています。

ゲームも音楽鑑賞も妥協したくない人

マイクを外せば、見た目も音も「100mm平面駆動の開放型ヘッドホン」そのものになります。ゲームの定位とハイレゾ音楽の没入を1台で両立したい人には、これ以上ない選択肢です。

オーディオの拡張に興味がある人

4.4mmバランス標準対応なので、後からDACやアンプへ投資して音を伸ばせます。アナログ有線で長く使える点も、長期的な満足につながります。

スタンドに掛けられたROG Kithara本体。開放型のイヤーカップと着脱式ブームマイクが見える
着脱式のMEMSブームマイクを備えるROG Kithara。マイクを外せば外観も音も高級オープンバックヘッドホンに切り替わる。引用: YouTube『音の真髄を極め、かつてないサウンド体験へ。』(https://www.youtube.com/watch?v=lFfJbjVyNOY)より

静かな環境でじっくり使える人

開放型は音漏れと環境音の透過が前提です。自室で腰を据えて使える環境がある人ほど、本機の音場の広さを存分に楽しめます。

よくある質問(FAQ)

Q
音漏れはしますか?
A

開放型のため、しっかり音漏れします。環境音もそのまま入るので、静かな自室での使用が前提です。電車内やオフィスには向きません。

Q
PS5やSwitchでも使えますか?
A

使えます。付属のUSB Type-C to Dual-3.5mmアダプターや3.5mm接続で、PC・PS5・Switch・スマホなど幅広く対応します。

Q
マイクは取り外せますか?
A

着脱式です。外せば外観も音もピュアオーディオ向けの開放型ヘッドホンとして使えます。

Q
アンプは必要ですか?
A

16Ωと低インピーダンスなので直挿しでも鳴りますが、ダイナミクスを十分引き出すには外部アンプや4.4mmバランス接続が有効です。

Q
ノイズキャンセリングはありますか?
A

構造上、ANCは非搭載です。マイク側にもデジタルノイズリダクションはなく、完全アナログ設計です。

まとめ

ROG Kitharaは、デジタル処理による多機能化へ進むゲーミング市場のなかで、あえて純粋な音響ハードウェアの質で勝負する異色のモデルです。HIFIMAN協業の平面駆動と開放型構造が生む定位と音場は、ゲームでも音楽鑑賞でも本物の体験を届けてくれます。

  • HIFIMAN協業の100mm平面駆動:速いトランジェントとTHD0.1%未満の原音忠実性
  • 開放型の広い音場:定位は最高クラス、ただし音漏れと環境音透過は前提
  • 4.4mmバランス対応:将来のDAC/アンプ投資で伸ばせる拡張性
  • 正直な注意点:重低音の圧は軽め、マイクはアナログでNCなし、静かな環境向き

価格は53,980円と安くありませんが、平面駆動の開放型ヘッドホンとしては破格で、海外メディアも価格対価値を高く評価しています。

現時点での評価

現時点で公開されているスペックと各メディアの実機評価から点数をつけるなら、こんな印象です。

  • 音質:★★★★★ 5.0(HIFIMAN協業の100mm平面駆動、定位は最高クラス)
  • 装着感:★★★★☆ 4.0(420gと重めだが3層ストラップと2種パッドで分散)
  • 接続・拡張性:★★★★☆ 4.5(3.5/6.3/4.4mmバランス+USB-Cドングル同梱)
  • マイク:★★★☆☆ 3.5(MEMSで高音質だがNCなし・破裂音を拾いやすい)
  • コスパ:★★★★☆ 4.0(平面駆動の開放型としては5万円台は破格)
  • 総合:★★★★☆ 4.0

私自身、XBA-A3からVictor WOOD master、DENON Perl Proまでイヤホン・ヘッドホンの音を追いかけてきましたが、平面駆動の開放型が描く音場の広さは、一度味わうと戻れない種類の心地よさがあります。ゲームの定位とハイレゾ音楽を1台で両立したい方は、ぜひe☆イヤホンのような試聴環境で一度耳にしてみてください。きっと「ゲーミングヘッドセット」という枠では語れない音だと感じるはずです。

プログラマー。高校時代のWALKMAN+Sonyイヤホンをきっかけに、10年以上にわたってオーディオを中心にガジェットを買い続けています。SONY XBA-A3は今も現役で愛用、Sonyワイヤレスイヤホンは3世代追いかけて進化を体感してきました。得意領域はイヤホン・ヘッドホン、4K有機ELテレビ、ゲーミングマウス、PC周辺機器。「自分が本気で買うつもりで判断軸を作る」スタンスで、後悔のない買い物のための情報を発信しています。

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