私自身、机の上はProArtとゲーミングモニターの2枚体制で満足しているのですが、ソファや布団にはモニターを持ち込めません。「寝転んだ視界に大画面を出す」というXRグラスの売り文句に毎回心が動くのは、そういう事情です。
そのジャンルの最新作が、VITUREが2026年8月20日に国内発売した「VITURE Pro 2」です。ブランド5周年モデルにあたり、ソニー製Micro-OLEDで最大1,600ニト・120Hz駆動・視野角50°を確保しながら、公称63gと同社史上最軽量・最薄をうたいます。価格は税込49,880円。旧モデルVITURE Proの国内価格から2万円以上下げてきました。
数字だけ見ると死角がなさそうですが、このジャンルには「カタログの数字がそのまま比べられない」事情と、「本体だけでは目的の機器につながらない」事情があります。とくに競合XREAL Oneとの間には、画面を空間に固定できるかどうかという決定的な分かれ目があるのです。
この記事では、スペックの整理と数字の読み方、XREALとの選び分け、機器別に必要なオプションまでまとめます。価格はすべて税込、2026年8月末の執筆時点で確認したものです。
製品スペック一覧
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 製品名 | VITURE Pro 2 XRグラス |
| 発売日 | 2026年8月20日 |
| 価格 | 税込49,880円 |
| ディスプレイ | ソニー製Micro-OLED(片眼1920×1080) |
| リフレッシュレート | 最大120Hz |
| 輝度 | 最大1,600ニト(メーカー公称) |
| 視野角 | 50° |
| 仮想画面 | 146インチ相当(メーカー表記) |
| 光学系 | Birdbath方式「UltraClarity 3.0」 |
| 視度調整 | 近視0〜-5.0D(左右独立ダイヤル式) |
| IPD(瞳孔間距離) | 57.0〜71.0mm対応 |
| 装着調整 | テンプル3段階+ノーズパッド3種 |
| 質量 | 公称63g |
| サイズ | 150.0×50.5×49.0mm |
| 接続 | USB-C(DisplayPort Alt Mode) |
| 直結対応 | iPhone 15/16/17、Android各機、Mac/PC、Steam Deck |
| 要別売アクセサリ | Nintendo Switch/Switch 2、PS5、Xbox(後述) |
| 空間トラッキング | 本体に専用チップ・カメラ非搭載(ソフトウェア処理のみ) |
| その他 | AI 2D→3D変換(SpaceWalkerアプリ)、SGS A+アイケア認証 |
120Hzという駆動は、このジャンルでは上位の数字です。ヌルヌル動く映像が目の疲れにくさにも効く理由は、リフレッシュレートの基礎知識として別記事で整理しています。
旧VITURE Proから何が変わったか
2024年の旧Proと並べると、改良点は明快です。
- 軽さ: 77〜78g→公称63gへ約2割減。長時間装着で鼻に効いてくる差です
- 明るさ: メーカー比較値で1,000→1,600ニト。日中の窓際でも画面が負けにくくなりました
- 視野角: 46°→50°。画面の没入感に直結する数字です
- 価格: 国内7万円台→49,880円。世代交代と同時の実質値下げで、旧Proの現在の実売より安い逆転も起きています
- 装着調整: 上位機種限定だったテンプルの3段階調整がPro系列に降りてきました
ソフト側では、スマホ内の写真や動画を疑似的な立体映像に変換して観られる「AI 2D→3D変換」がSpaceWalkerアプリに加わりました。飛び道具ではあるものの、手持ちの素材で立体視を試せるのは5周年モデルらしい遊び心です。
一方で注意したいのは、目玉のように紹介されがちな近視調整ダイヤル(0〜-5.0D)は旧Proから続く継承機能だということ。Pro 2の新機能ではありません。メガネなしで使える便利さは本物ですが、-5.0Dを超える近視や乱視の方は別売のレンズフレーム(3,980円)で度付きレンズを入れる方式になります。
「63g」と「1,600ニト」の読み方
カタログの2大数字には、それぞれ但し書きを付けておきます。
まず質量。公称63gに対し、AV Watchの実機レビューでは補正レンズ込みで65.5gという実測が出ています。誤差の範囲ともいえますが、「何を含んだ状態の数字か」で2〜3g動くことは頭に入れておくといいでしょう。あわせて「フレーム16%薄型化」という訴求も、公表寸法の単純比較ではきれいに16%にならず、特定部位の測定とみられます。
次に輝度。旧Proの輝度をメーカー現行比較は1,000ニトとする一方、発表当時の海外報道には最大4,000ニトという数字も存在しました。パネル自体の輝度か、光学系を通ったあとに目へ届く明るさかで、この種の数字は大きく変わります。Pro 2の1,600ニトも測定条件は非公開なので、他社カタログとの一騎打ちに使える数字ではないと考えるのが安全です。救いは実機評価で、AV Watchは競合より体感的に明るいと報告しており、明るさが強みであること自体は裏付けられつつあります。
XREAL Oneとの分かれ目は「空間固定」
実売5〜6万円帯でPro 2と天秤にかけられるのが、XREAL Oneシリーズです。数字を並べます。
| 製品 | 実売の目安 | 輝度(公称) | 視野角 | 質量 | 空間固定 |
|---|---|---|---|---|---|
| VITURE Pro 2 | 49,880円 | 1,600ニト | 50° | 63g | ソフト処理のみ |
| XREAL One | 6.3万円前後 | 700ニト | 50° | 82g | ○(X1チップ内蔵) |
| Rokid Max 2 | 6万円前後 | 600ニト | 約50° | 75g | — |
| RayNeo Air 3s | 4万円前後 | 650ニト | 46° | 76g | — |
軽さ・輝度・価格の3点ではPro 2が頭に出ます。ではXREAL Oneの2万円高は何の値段かというと、本体に内蔵された自社チップ「XREAL X1」です。これがあると、画面を空中の一点に固定して、顔を動かしてもウィンドウがそこに留まる——つまり仮想モニターとしての作業利用が本体だけで成立します。
Pro 2はここを割り切りました。トラッキング用のカメラもプロセッサも積んでおらず、3DoF的な体験はSpaceWalkerアプリなど接続機器側の処理頼みです。国内の比較レビューでも「画面が空中に留まるかどうかで使い心地が大きく変わる。Pro 2は正面視聴向け」と整理されています。
選び方はシンプルで、映画やゲームを正面で観るならPro 2、画面を貼り付けて作業したいならXREAL One系。軽さと明るさを取るか、空間コンピューティング的な使い方を取るか。同じ「XRグラス」の棚に並んでいても、性格は別物です。
表の下2機種にも触れておくと、Rokid Max 2は視度調整が-6.0Dまでと広い代わりに、単体駆動は60Hz止まりで120Hz動作には別売機器が必要です。RayNeo Air 3sは4万円切りの価格が武器ですが、視野角46°と一段狭い。安い方から順に「どこで妥協するか」がはっきり分かれているジャンルなので、重視する軸を先に決めてから表へ戻ると選びやすくなります。
つなぐ機器で変わる、必要なオプション
もうひとつ購入前に必ず確認したいのが、手持ち機器との接続です。本体はUSB-C(DisplayPort Alt Mode)出力の機器なら直結できますが、それ以外はアクセサリが要ります。
| つなぎたい機器 | 直結 | 必要なもの |
|---|---|---|
| USB-C映像出力対応のスマホ・PC・Steam Deck | ○ | ケーブルのみ(同梱) |
| iPhone 15/16/17 | ○(ミラーリング) | 充電しながらの利用や一部拡張機能は「USB-C XR充電アダプター Ultra」(15,800円) |
| Nintendo Switch/Switch 2 | × | 「モバイルドック Mini」(16,800円・2026年11月中旬出荷予定) |
| PS5/Xbox | × | HDMI変換対応の上位ドック(Pro Mobile Dock) |
このほか首掛けバッテリー型の「ネックバンド」など上位アクセサリの展開もありますが、日本向けの価格・対応条件は変動があるため、購入時に公式ショップでの確認をおすすめします。
Switch 2で使いたい人は、ドックMiniの出荷が11月中旬予定という時差に注意してください。グラスだけ先に買っても、それまで携帯モードのSwitch 2とはつながりません。またiPhoneは素のケーブルで画面ミラーリング自体は可能ですが、充電併用や空間系の機能まで使うならアダプターUltraの追加で計6.5万円程度になる計算です。「49,880円で完結する構成」と「フル装備の構成」の間に、それなりの幅があるジャンルだと知っておくと後悔がありません。
気になるポイント
- 画面の空間固定ができない: トラッキングチップ非搭載のため、頭を動かすと画面もついてきます。仮想デスクトップ的な作業用途には不向きです
- HDR10に非対応: 実機レビューで指摘されています。映像美を極めたい人には惜しい欠落です
- 周辺部の描写に注文: 新光学系でも画面端にわずかな滲みが残るというレビューがあり、輝度調整の刻みが粗いという指摘もあります
- ゲーム機接続は別売前提: Switch 2用ドックMiniは16,800円かつ11月出荷。PS5はさらに上位ドックが必要で、総額が読みにくくなります
- カタログ数字の測定条件が非公開: 輝度・質量・薄型化率はいずれも条件次第で動く数字です。他社比較は実機レビューを併読してください
- 乱視・強度近視は追加費用: 内蔵ダイヤルは近視-5.0Dまで。超える場合は別売レンズフレーム+度付きレンズ代がかかります
どんな人に向くか
寝転んで映画・動画を観たい人
正面視聴に割り切った本機の設計が、いちばん素直に活きる使い方です。63gの軽さと1,600ニトの余裕は、仰向けでの長時間視聴にちょうど効いてきます。メガネなしで視度を合わせられるダイヤルも、寝室用途と相性抜群です。
Steam Deckやスマホゲームの携帯大画面が欲しい人
USB-C直結で120Hzまで出せるので、携帯ゲーム機との組み合わせは追加投資なしで完成します。据え置き機と違い、ドックの追加費用がかからないのはこの組み合わせだけです。
出張の多いノートPCユーザー
ホテルでの作業画面拡張——ではなく、正確には「作業後の娯楽用」に向きます。空間固定がないため資料を並べる用途は苦手ですが、モニターのない部屋で映画館を作る道具としては最軽量クラスの選択肢です。
ちなみに「メガネ型ガジェット」はいま、映像用のXRグラスのほかにも面白い方向へ枝分かれしています。会話の字幕表示に特化した1本は別記事で解説しているので、ジャンルの広がりを見たい方はどうぞ。
よくある質問(FAQ)
- QVITURE Pro 2は度付きメガネと併用できますか?
- A
内蔵の近視調整ダイヤル(左右独立・0〜-5.0D)で裸眼利用する設計が基本です。範囲を超える度数や乱視は、別売レンズフレーム(3,980円)に度付きレンズを入れて対応します。
- QiPhoneでそのまま使えますか?
- A
iPhone 15以降ならUSB-Cケーブルで画面ミラーリングが可能です。充電しながらの利用や一部の空間機能には別売の充電アダプター(15,800円)が必要になります。
- QSwitch 2につなげますか?
- A
本体だけでは接続できません。別売のモバイルドックMini(16,800円)が必要で、出荷は2026年11月中旬予定です。
- Q画面を空中に固定して作業できますか?
- A
本体にトラッキング機能がないため、XREAL Oneのような本体完結の空間固定はできません。正面視聴が基本のグラスです。
- Q旧VITURE Proから買い替える価値はありますか?
- A
軽さ2割減・輝度向上・視野角拡大と着実な進化ですが、機能面の骨格は近い製品です。旧Proの装着感や明るさに不満がある場合に検討する、で十分だと思います。
まとめ:正面視聴に割り切った、いまの「軽さ・明るさ」基準機
VITURE Pro 2は、XRグラスに何でもやらせようとせず、「観る」体験の質と装着の軽さへ資源を集中させた1本です。
- 公称63g・最大1,600ニト・120Hz・視野角50°で税込49,880円。旧世代から実質値下げ
- 近視0〜-5.0Dの視度調整ダイヤルとIPD・テンプル・ノーズの調整幅で、裸眼運用の間口が広い
- 空間固定は非対応。作業用の仮想モニターが欲しいならXREAL One系が相手
- Switch 2・PS5は別売ドック前提。構成次第で総額が変わる点は購入前に確認を
- カタログの輝度・質量は測定条件が非公開。数字は目安、判断は実機評で
現時点での評価
発売2週間時点の公開情報と各実機レビューをもとにした採点です。
- 表示性能:★★★★☆ 4.5(Micro-OLED・1,600ニト・120Hz。HDR10非対応が惜しい)
- 装着性:★★★★☆ 4.5(公称63gと豊富な調整機構)
- 機能性:★★★☆☆ 3.5(空間固定なし・正面視聴特化の割り切り)
- 接続・拡張:★★★☆☆ 3.5(USB-C直結は快適、ゲーム機は別売ドック頼み)
- コスパ:★★★★☆ 4.5(この表示性能で5万円切りは水準以上)
- 総合:★★★★☆ 4.0
私自身、モニターを増やす方向の環境構築は一段落したので、次に足すならこういう「置き場所のいらない大画面」だろうと思いながら調べていました。用途が正面視聴に合うなら、価格と軽さのバランスは現行屈指です。店頭で試せる機会があれば、ぜひ視度ダイヤルの合わせ心地と文字のシャープさを確かめてみてください。




